私がまだ若かりし頃、友人からこんな話を聞きました。
その友人は何年かぶりに同窓会か開かれることになり、参加することを楽しみにしていました。当日は久しぶりに雑用から解放され、精一杯のおしゃれをして、いそいそと出かけたのだそうです。久しぶりに会う皆の懐かしい顔を見て一気に学生気分に戻り、楽しいお喋りのひと時をすごし、そろそろ終盤にさしかかる頃、ふと友人の美しく手入れされた手が目に入り、どうしてか思わず自分の手をテーブルの下に隠したらしいのです。その時の気持ちを語ってくれました。
手を酷使するばかりでゆっくりと手入れをする時間もなく、そんな自分の境遇に関して少し悲しかったのだそうです。女性にとっての手を使うことは何をするにも必要ですから、おのずと荒れていくのは仕方のない事。
「でも誰かの為に、その手を使っているのではないの?」
私は問いかけました。
彼女は自分の周りには世話をしないといけない人がそこそこ居て、自分の為に時間を割けないのよね、と応えてくれました。でも確かに見た目は太くなった指、シミも少しは出てきたかもしれないけど、手の持ち主である貴女の心は美しいのではないかしら、と言いました。私達は見た目に先ず目が行きますが、見えない隠れた所に本当の大切なもの、美しいものが有るのではないかと考えさせられた出来事でした。
それから彼女は誇りをもって節くれだった手を隠すことなく、時には手の手入れもするようになったそうです。
執筆者 K.N.(SWG代表・カウンセラー)
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